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東京地方裁判所 昭和49年(借チ)1009号 決定 1975年1月14日

申立人

船橋千代子

右代理人

佐伯仁

外一名

相手方

宇田川きくゑ

右代理人

水戸守巌

主文

一  申立人が別紙目録(三)記載の増改築をなすことを許可する。

二  申立人と相手方との間の別紙目録(一)記載の土地についての賃貸借の賃料を、本裁判確定の月の翌月分から、月額七六五〇円に改定する。

三  申立人は相手方に対し金六二万五〇〇〇円を支払え。

理由

(申立の要旨)

一  申立人は昭和三三年五月一日相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を、非堅固建物の所有を目的とし、期間二〇年、賃借人(申立人)が賃借地の現状を著しく変更するときは賃貸人(相手方)の承諾を要するとの約定で賃借し、本件土地上に同目録(二)の1および2記載の建物を所有している(ただし一部は取毀しずみ)。なお、地代は昭和四七年以降一か月四八〇〇円(3.3平方メートル当り九六円)である。

二  申立人は右建物について別紙目録(三)記載の増改築をなすことを計画しているところ、右増改築は本件土地の利用上相当であるのに、相手方はこれを承諾しない。

よつて、右承諾に代わる許可の裁判を求める。

(当裁判所の判断)

一申立の要旨一の事実は、当事者間に争いのないことその他の本件資料によつてこれを認めることができる。そして、本件の資料によると、別紙目録(三)記載の増改築は、本件土地の通常の利用上相当と認められるから、本件申立は認容されるべきである。

二附随処分

本件増改築により、申立人は本件土地につき従前より有効且つ安定した利用をなし得るという利益を受け、その反面相手方は賃貸借が事実上長期化する不利益を免れないから、本件申立を認容するに当つては、当事者間の利益の衡平を図るため、申立人に財産上の給付を命ずるとともに、地代を改定するのが相当である。

右財産上の給付について鑑定委員会は、本件土地の更地価格を二五〇〇万円(3.3平方メートル当り五〇万円)、借地権価格をその七割相当額としたうえ、(1)賃貸借を更新し、その存続期間を許可の時から二〇年とすることを前提とし、その更新料相当額として七二万二〇〇〇円、(2)増改築承諾料相当額として八七万五〇〇〇円(借地権価格の五パーセント)、右合計一五九万七〇〇〇円をもつて給付額とする意見書を提出した。しかし、本件賃貸借はなお三年以上の期間を残していること、本件増改築が全面改築ではないことを考慮すると、本裁判によつて賃貸借の更新(期間の延長)をすることは相当ではないから、右(1)の更新料は本件給付額に加えるべきではなく、また、右(2)の承諾料相当額も、全面改築の場合に更地価格の三パーセントをもつて給付額とする従来の裁判例に徴してやや高きに失するものというべきである。当裁判所は、右の裁判例を基準とし、本件増改築が一部増改築であるとはいえ相当に大幅なものであること、その他諸般の事情を考慮して、鑑定委員会の意見による本件土地の更地価格二五〇〇万円の2.5パーセントに当る六二万五〇〇〇円をもつて、本件における財産上の給付額と定める。

地代については、鑑定委員会の意見に従い、本裁判確定の月の翌月分から月額七六五〇円(3.3平方メートル当り一五三円)に改める。

よつて、主文のとおり決定する。

(村岡二郎)

<別紙目録(一)(二)(三)省略>

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